科学誌のNatureで書評を担当したオジャース氏は書籍の内容に異論を唱え、「SNSの使用が子どもたちの脳に影響を及ぼし、メンタルヘルスを悪化させているという証拠はない」と主張してました。
ハイト氏は「メンタルヘルスの悪い若者はSNSを利用する頻度が高い」という相関関係を「SNSの利用がメンタルヘルスを悪化させる」という因果関係と取り違えており、SNSをやり玉に挙げることで経済的困難や人種差別といった本当の原因から目がそらされてしまうと批判している。
この問題は長年にわたり生産的な学術的議論が行われており、明確な答えはまだでていない。
それだけ、人の心は複雑ということでしょう。
メンタルヘルス悪化の原因
メンタルヘルス悪化の本当の原因は「構造的な差別や人種差別、性差別、性的虐待、オピオイドのまん延、経済的困難、社会的孤立」といった長年の社会問題にあると科学誌のNatureで書評を担当したオジャース氏は主張している。
しかし、この理論だと、2000年代半ばまで横ばいだった不安や抑うつを抱える若者の割合が、リーマン・ショックの約4年後から急増した理由を説明できないとハイト氏は反論している。
アメリカ・イギリス・カナダのオンタリオ州・オーストラリア・ニュージーランドにおいて、自傷行為を報告した若者の割合が少女と少年の両方で自傷行為が増加傾向にあり、特に少女の場合は2011~2012年頃から急激に増加している。
ハイト氏は、オジャース氏の説明通り若者のメンタルヘルス悪化がアメリカの学校における銃乱射事件や貧困、人種差別などが原因であるならば、世界各国で同じような傾向がみられるのは不自然だと指摘している。
また、2011年以降でみれば、貧困ラインを下回る家庭より、裕福な家庭の若者の方が鬱になりやすいという指摘もある。
対策はあるのか?
ハイト氏はSNSが若者のメンタルヘルスに悪影響を与えるとして、以下のような取り組みを行うべきだと訴えています。
- 高校まではスマートフォンを使わせないような社会的規範を設ける。
- 16歳未満のSNS使用を禁止する。
- 学校にスマートフォンや携帯電話を持ってくることを禁止するか、登校時に学校が預かるシステムにする。
- 現実世界での自律的で自由な遊びを推奨する。
ハイト氏は、「私たちは、たとえ時に誤った警告を与えるとしても、異議を唱える懐疑論者を必要としています。懐疑論者には神のご加護があらんことを。しかし、ある時点ではたとえ100%正しい原因だと断言できなくても、最も確からしい理論に基づいて行動を起こす必要があります。今がその時だと思います」と述べ、早急に若者のSNS使用を規制をするべきだと主張している。