Appleが一部製品の値上げに踏み切ったことで、MacBook Proは30万円超えが当たり前のようになってきました。
この物価高の中で致し方無い部分はあるにせよ。買い替えを考えている人にとっては結構な出費です。
しかも値上げの動きはAppleだけではなく、他のノートパソコンメーカーも同様の方針を示し始めています。
原因はハイエンド機に限らない、メモリの急騰
今回の値上げの最大の要因は、RAM(メモリ)価格の急騰です。影響を受けているのはハイエンドモデルだけでなく、いわゆる「そこそこの性能」のミドルレンジ機まで及んでいます。
ドイツのテック系ブログComputerBaseの報道によれば、時価総額で世界最大級のPCメーカーであるLenovoは、この状況が今後4年間は改善しないという見通しを示したとのことです。あるテックカンファレンスの場で、Lenovoは、DRAMとNANDの価格がここ数年で下がる兆しはなく、たとえ2030年以降に価格が落ち着いたとしても、その水準は2025年10月以前と比べればまだ高いままだろうと警鐘を鳴らしています。
AI需要にメモリを奪われる消費者向け市場
なぜここまでメモリが値上がりしているのか。背景にあるのは、世界のメモリ供給を担うMicron、Samsung、SK Hynixという半導体大手3社の事業方針の転換です。
AIデータセンター向けに必要とされる特殊な広帯域メモリの需要が急拡大する中、3社はその対応を優先させ、結果として消費者向けのDRAM供給が後回しにされる形になっています。メモリ需要があまりに強いため、各社は今後何年にもわたって価格を高止まりさせるための新たな仕組みを次々と打ち出している状況です。
Micronが導入した「長期の縛り」契約
その象徴的な動きが、Micronが発表した新しい取引の仕組みです。Micronは取引先に対し、長期にわたって高値での調達を求める契約形態を用意しました。同社のトップは、これを複数年単位で決まった数量の購入を約束させる、いわゆる「テイク・オア・ペイ」型の契約だと説明しています。
Micronによれば、データセンター、コンシューマー、自動車の各分野において、大口顧客数社を含む十数件規模でこうした契約を締結済みとのことです。四半期の売上は前年同期から3倍以上に急増したと報告されており、メモリメーカー側の交渉力の強さがうかがえます。この種の契約は2030年末まで続く見込みで、実質的に「誰が」「どれだけ」「いくらで」メモリを手にできるかをメーカー側が主導権を握って決める構図になっています。
板挟みになるPCメーカーたち
こうした状況に、製品を作る側は困惑を隠せません。長らく待たれていたValveの家庭用ゲーミングPC「Steam Machine」は基本モデルで1,050ドル(日本円で16万円超)という価格になりましたが、Valveのエンジニアは、メモリメーカーから提示される価格に対して「買うか買わないか」の二択しか選べない状況だったと明かしています。交渉の余地はほとんどなかったというわけです。
Appleのティム・クックCEOも、メモリ業界の値上げ圧力の大きさについて率直な苦言を呈しており、消費者向け製品のためにもメモリの価格と供給が正常な水準に戻ってほしいという趣旨の発言をしています。
この先どうなる? 2028年でも「元の価格」には戻らない
RAMのコスト交渉の余地がほとんどないため、ノートパソコンメーカーに残された選択肢は、値上がりしたメモリ価格をそのまま受け入れるか、その分を製品価格に転嫁して消費者に負担してもらうかのどちらかです。メモリメーカー側が顧客に対し「2028年、あるいはそれ以降まで値下がりは期待しないでほしい」と伝え続けているのも、こうした背景があるからです。
厄介なのは、仮に2028年になったとしても、ノートパソコンなどガジェットの価格が実際に下がるとは考えにくい点です。Appleが調達ルートを見直すなどして多少のコスト改善を図る可能性はあるものの、4年後に価格をいくらか引き下げられたとしても、2025年以前の水準まで戻ることはまずないというのが実情のようです。
まとめ
- AIデータセンター向け需要の急増で、消費者向けメモリの供給が圧迫されている
- Micronなど大手メーカーは長期の高値契約を顧客に求めるようになった
- PCメーカー側には価格交渉の余地がほとんどなく、値上げを消費者に転嫁するしかない状況
- 2028年以降も供給は改善する見込みだが、価格が2025年以前の水準に戻ることは期待薄
ノートパソコンの買い替えを検討している人にとっては、悩ましい時代がしばらく続きそうです。
